なろう系小説から現代人の望みを考えてみるブログ

なろう系小説は現実逃避ツールなの?現代はそこまで不幸な世の中なの?小説家になろうから現在人の望みは何なのかを考えてみるブログです。

『転生したらスライムだった件』備忘録兼感想

ジャンル:王道チート
読みづらさ:3
チート度:5
ハーレム度:1
ドラゴンボール感:5
シムシティ感:4
また俺何かやっちゃいました度:3
近う寄れ度:4
現代的価値観の侵食:2

なろう系の代表作ともいえる、もう既に有名になった作品。
ネット版スピンオフにアニメ、漫画、漫画のスピンオフ、ゲームと多方面のメディアに渡って大進撃な作品。

私自身も連載時から読んでいて、小説家になろうにドップリとハマってしまった要因の一つ。

まず、題名が良かった。
それまで異世界ものといえば転生にしろ転移にしろ、どんな能力をつければ面白くなるかという点で試行錯誤されていて、人気作の中には通常転生や魔王への転生、内政もの、ダンジョンものがチラホラと出てきたところだったと思う。

そんな中で、魔族側の弱いイメージのあるスライムが主人公になったという点で今度はその視点で来るか!とインパクトはあった。
さらに「◯◯な件」という当初廃れ始めていたネットスラングを使い、記憶に残しやすくしている。

内容に感しては、一言でいうなればドラゴンボール
主人公がちょっと強くて、強い敵を倒してさらに強くなって、さらにさらに強い敵と戦うというのがメインの話の筋になっている。

出生によって強い理由が少しずつ明らかになるがそこすらも、ご都合主義だろ!と突っ込まれたら話が出来ないが、全体的に少年誌的なノリで話が進んでいくので安定感がある。

文章は能力値を文中にダラダラと差し込むことは無く、比較的読みやすい。
が、登場人物が一度に増える事があったりするので、コイツ誰だっけ?となる。
一番分かりにくいのが、精神体と肉体の不一致と、実は◯◯でしたという展開にしたいが為の、20世紀少年でいうところの「ともだち」が実は誰なんだ話にさしかかると一気に分かりにくくなってくる。
実際私はここで一度読むのを中断した。

それでも、徐々に仲間が増えて、強くなり、強大な敵と戦いさらに強くなる。
仲間や街を育ててインフレを起こしていく様子は読んでいて気持ちがいい。

日常回のような平和な話が差し込まれるが意外と後の伏線にもなっている事が多く、読み返してみるとプロットを上手く作り込んでいるなと感じる。

別作品では読んでいて気になることもある、主人公が現代人の価値観を持っていて、中世ファンタジー世界の住人が簡単に同意してしまう問題もこの話では上手く処理している。
主人公が魔物だということと、個の力によってなんとでもなる。という価値観を言い方を変えて繰り返していることによって読者に刷り込ませていることであまり気にならない。

主人公がチートで努力しない問題では、主人公自身の努力シーンはほぼ無いか、割愛されている。
ドラゴンボールでいうと宇宙ポットでの修行や精神と時の部屋などの話があっても良さそうだが、この主人公の場合はスライムで能力を奪うという特性上、徐々に強くなっていくのでは無く、敵をやっつけて取り込んだ瞬間に一気に強くなるので、修行シーンが面白くならない。
あっても新しく取得した技の確認で終わる。物語始めの方は技の確認もチートものの醍醐味の一つなので、それも必要だが、後半は同じことをしていれば必ずダレてしまう。

その代わり内政チートのような、他国と会談をして地盤を固めたり、部下が街を異常な速度で開発するなど、シムシティ感覚によって勢力を拡大した感を見せている。

最も上手いなと思った部分は強さの表現について。
それまでの流行りはステータスやスキルによって強さを読者に認識させていたが、転スラの優れているところはステータスやスキルはただの栞で、実際のところは三段階で強さのステージを変えているところだ。

ただの栞とは、各キャラクターの特殊能力の名前が暴食之王(ベルゼビュート)、忍耐之王(ガブリエル)などという名称を付けてどんな事が得意かの方向性だけを指し示しながら、エヴァンゲリオンのように中身は知らないけれどニュアンスカッコいい効果を付け加えている。

三段階のステージとは、
第1段階がランク別の強さ。
第2段階目が究極能力(アルティメットスキル)の有無と能力の使い方や質。
第3段階の超越者の強さの比較では、エネルギー量(EP値)の過多や覚醒魔王級などの比較と、それぞれのキャラクターの能力の相性や性質。

といった強さ判定をヌルッと次の段階へ移行させている点が素晴らしく感じる。
これをすることによって、具体的には分からないけれど、なんかこっちの方が強そうだなという事がステータスを用いなくても頭に入ってくる。

そんな転スラだが、中盤書いたように何度か読むのを中断してしまっている。
要因としては、話数自体はそれ程多く無いのだが、一話あたりの文章量が比較的多目であること。

それと、ヒナタが勇者になるならないの場面で状況が分かりにくい。
ここで一挫けした。

次に挫けてしまったのが、最終章の天魔対戦編。
延々と戦闘シーンが描かれるが、最終章でこれまでの主要キャラクターの一番輝かせないといけない場面。あのキャラはこうでした、一方あのキャラはこうでした。と読んでいくうちに多少飽きてしまった。
工夫をして様々な戦い方をしているのは分かる。単調では無いが、転スラを読むのを放棄して、一度全く別の作品を読んでからまた読み直したら面白く続きが読めた。というのが正直な個人の感想。

なろう系では半分頭をぼんやりさせながらも読むことが出来るところが個人的には好きだったりする。部分的に小難しいところはあるが基本的には雰囲気でご都合主義を使いチートがマックスな作品かと思う。

色々悪い部分も書いたがかなり面白い。
主人公や味方がどんどん強くなっていき街は大きくなり、リムルの強さや影響力が拡大していく。
少年誌の様な次々に強くなっていく爽快感を様々なテクニックを使い演出している良作だと思う。

追伸
番外編も面白く、それ単体ではあり得ないデウス・エクス・マギナ感もあるがカルチャーギャップものの手法を使っていたりで本編を読み終わって番外編はいいやと思ってる人がいたらもったいない。オススメ。
コミカライズもいい感じで特に転スラ日記は元の戦闘バリバリの世界観を基にしながら上手く日常系の良さを出している。

アニメは感想こちら。一言でいうと時期が悪かった。